スレコピペその20

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594 :名無し募集中。。。:2008/01/18(金) 02:20:39.43 0


時同じくして、カフェーでは――


「はぁ……」
「はぁ……」


ため息が重なり、二人は顔を見合わせた。
平日の夕刻とあって客もまばらな店内。
定位置に腰を下ろした熊井と注文をとりにきた桃子は、ちいさな偶然に微笑み合う。


「どうしたんですか熊井さん? 溜息なんてついちゃって」
「いやぁちょっと色々あってね……ももちこそ。何かあった?」


盆を抱きながら、唇を尖らせて左右に身体を揺する桃子。
いつもの太陽のような笑顔はそこにはなく、表情は冴えない。






596 :名無し募集中。。。:2008/01/18(金) 02:26:59.20 0


「……ねえ熊井さん、もぉって可愛いですよね?」


突然の問いかけに、熊井は一瞬間を置いてこくこくと頷いた。


「ああ、勿論」
「本当に? お世辞とかいりませんよ?」
「本当本当。誰のためにここへ通ってると思ってるの」
「じゃあ、帝國劇場に立てるくらい?」
「立てる立てる。俺毎日見に行っちゃう」
「……ですよね、もぉが立たなきゃ誰が立つんだって話ですよね?
よ〜し! 頑張って働いて絶対見返してやるんだからっ」


言うと、桃子は足をはの字にして奥へ駆けていった。






597 :名無し募集中。。。:2008/01/18(金) 02:36:47.61 0


「あの…注文…」


呟きに気付いたのか、思い出したように立ち止まり駆けて来る桃子。


「その時は矢島さんも連れてきてくださいねっ」


とびきりの笑顔でそう残し、今度こそ奥へはけて戻らなかった。


「なんだよみんなして矢島矢島って…」


先日、えりかから受けた相談も矢島絡みだった。
唇を尖らせていた熊井だが、刹那、頭上に電球が点る。






598 :名無し募集中。。。:2008/01/18(金) 02:38:25.10 0


(そうか、帝國劇場……)


奥手な矢島のことだ、何かきっかけを作ってやらないことには話も出来ないだろう――


頭の中で、音を立てて計画が組み立てられていく。
この手の事にかけては誰よりも頭の回る熊井である。


(二枚分の切符を矢島に渡し、愛理ちゃんを誘い出させれば……)


先日から悩み事の解決策を見出した彼は、にんまりと笑った。