スレコピペその7
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290 :名無し募集中。。。:2008/01/13(日) 13:35:10.43 O
「舞美お兄様!」
舞美が家に帰ると小さな体が飛び付いてきた。
舞美の従姉妹の萩原舞。
「舞、今日もきていたのかい?」
「だってお兄様に毎日会いたいんだもん…もしかして迷惑?」
不安そうに舞美を見上げる舞。
いつも勝ち気な舞がこんな表情を見せるのは今の所舞美の前だけ。
舞美本人は気付いていないけれど…。
「そんなことないよ。舞は僕にとって妹のような大切な存在なんだから迷惑だなんて思ったことは一度もないよ」
舞の頭を優しく撫でて舞美は微笑む。
295 :名無し募集中。。。:2008/01/13(日) 18:01:38.10 0
「ふーん……お兄様の妹はたっくさんいるのね」
ふくれっ面でそっぽを向いた舞に、舞美はあははとのん気に笑った。
「なんだいそれは?」
「この間お兄様のお友達がきてたとき、舞きいたもん」
先週、初めて熊井を家に呼んだときか。あの時、途中で舞がやってきたのだ。
部屋で二人で話込んでいたのを聞かれてしまったらしい。
「あいりは妹のようなものだからねって、お兄様言ってた。
ねえ、あいりってだれ? 舞よりかわいい?」
衣服の裾を引かれ、たじたじになる舞美。
許婚なのだとこの幼い妹に話したところで、新たな厄介を生むだけだろう。
「お友だちだよ、大事な。さ、夕食にしよう」
未だ納得のいかない表情の舞は、舞美に背を押されながら渋々と居間へ向かった。
296 :名無し募集中。。。:2008/01/13(日) 18:03:11.58 0
夕食を終え、一緒に風呂に入るといって聞かない舞をなんとか振りきり、
舞美は自室に入った。
床の上にごろんと大の字になる。
何かを考えようとしても、頭に浮かぶのは今日の出来事だけだった。
土手を駆け下りてきた時の、潤んだ瞳。
ただ会えて嬉しいのだと、そう言った薄紅の唇。
熊井に許婚とはどこまでいったのだと問われたとき、咄嗟に“妹”という言い訳を
口にしてしまったけれど。
今日はっきりと、そうではないことに気付いた。
299 :名無し募集中。。。:2008/01/13(日) 18:09:00.46 0
「愛理……」
たった一人、天井の木の節を見つめながら呟く。
名を呼んだだけで、焼けるほど胸が熱い。こんなにも、ひとりを寂しく思ってしまう。
これが妹に抱く感情であるはずがない。
ずっと兄のように見守るだけでいいと思ってきた。
無論、これからも大切にしたいと思っている。
ただ、時にその誓いを破ってしまいそうになる自分が怖いのだ。
体全体に熱くたぎる彼女への思いに、舞美は戸惑っていた。
こんなことでは駄目だ――
威勢よく立ち上がり、部屋の隅に立てかけてあった竹刀を握り締める。
駆け下りるように庭へ出た。
高く持ち上げた刀を、ぶんっと振り下ろす。
すでに額にたまの汗が浮かんでいる。
煩悩を断ち切るように、舞美は夜中素振りを続けた。