スレコピペその6

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283 :名無し募集中。。。:2008/01/13(日) 01:43:44.38 0
梨沙子は家に帰ると洗面所で顔を洗い、髪を梳かしまとめ直す、そうして身支度をととのえてからゆっくり紅茶を淹れる。
このプロセスはお茶のためなのか会う人の為なのか、自分でもよくわからない。


「みや、入るよ。お茶淹れたから・・・」


梨沙子はくたびれて開けるたび悲鳴を上げる木の戸を開けた、菅谷家の離れのアトリエは油絵の具や木屑、色々な香りがする。
梨沙子の父は若い芸術家の為に金を使うのが好きで今まで何人か画家の面倒をみてきた。
だが他にも梨沙子が家にいながらいいものが見られるようにという理由もあったらしい。


「みや、」


みや、雅は返事をしなかった。
背後からもう一度呼ぶ、邪魔になったら辛いが顔を見たかった。
雅はいつも面白い話をしてくれるしよく構ってくれるが一度描き始めるとほとんど周りが見えなくなるのだ。


「ああ、梨沙子・・・ありがとう」


やっと気づいてくれた。梨沙子はそれだけで嬉しさでいっぱいになる。
雅は菅谷家で世話になっているが梨沙子のことをお嬢様などとは呼ばない
幼かった頃友達や兄弟のような関係に飢えていた梨沙子は、菅谷家に関係した画家の卵たちに皆
呼び捨てで読んで欲しいと言っていた。だが結局そう呼ぶ者はいなかった。
皆、もし怒らせて援助が途絶えたらと恐れていたんだろう。その度に寂しい気持ちになっていた。
しかし雅は梨沙子を本当の妹のように扱ってくれるのだ。


雅は紅茶を一口飲みまた作業に取り掛かった、ついこの間見た時キャンバスには青やら赤やら塗り重ねていて
何がなんだかわからなかったのだがもうだいぶ形を成していた。


梨沙子はいつも近くにあるコンテナに腰を下ろし雅の斜め後ろから作業を眺めている。
そして雅の美しい黒髪と端整な顔も眺めて幸せな気持ちになっている。