スレコピペその31

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118 :名無し募集中。。。:2008/01/25(金) 00:24:25.26 0
友理奈、お前は自分の立場がわかっているのか!?」


熊井はいつもこうして父親に叱られていた。
須藤家との毎月の食事会を欠席するたびに言われた。
茉麻に会いたくなかったわけでも、
須藤家の人々と仲良くなりたくないわけでもない。


「わかっています。」


「わかっていたらどうして来なかった!!」


父親は豪腕な商人であった。
元々は大店の跡継ぎであったが、
武家や幕府に媚びへつらって成り立っていた店でもあった。


しかし、父親の代になると戦争特需とその少々強引なやり口で
熊井家は「死の商人」と呼ばれるようになるが
それに見合うだけの財産を築き、熊井家を名家へと押し上げた。


「…茉麻が、道具のようで…気の毒です」


「…それは仕方ないことだ。お前だってもう子どもじゃないんだぞ。」


そう言われては熊井は黙るしかなかった。だが―――




119 :名無し募集中。。。:2008/01/25(金) 00:31:05.49 0
熊井はふと、初めて茉麻にあったときのことを思い出した。
歳は一つ上だったが、そんなことを気にせず昔はよく遊んだ。
茉麻は包み込むような柔かい女性であったし
友達としても素晴らしい人間であった。


熊井はいずれこの女性と結婚をして、店を継ぐのだと教えられてきた。
だから熊井もそうだと信じて疑わなかった。


「須藤家はここら辺じゃ指折りの名家だ。縁談が上手くいけば…」


「熊井家も、成り上がりだと舐められずに済む…ということですよね。
須藤家は軍需に関しては政府を動かすだけの金も力もある…」


熊井はそれを知ったとき、心底父親を嫌いになった。
茉麻は所詮、我が熊井家の名をあげるためだけの道具―――。


「わかっているのならばちゃんとしろ。わかったな…」




120 :名無し募集中。。。:2008/01/25(金) 00:33:49.51 0
父親はそれだけ言うと寝室へ向かってしまった。
ソフアの部屋に取り残された熊井は、
普段は禁止されているが、そこへ横になるとため息をつくのであった。


「…茉麻…ごめんよ。」


小さな呟きは誰にも聞こえない―――。


「だけど…俺は親父の意のままに生きるなんていやだ…そんなの…
茉麻…今は…ダメなんだ…でもきっといつか……すまない。」


そして熊井はそのまま眠ってしまうのであった。