大切なあなたの日。





「「「「「「「「お疲れ様でした〜!!!!」」」」」」」」




今日で5日連続でやった新曲のイベントと握手会も終了。
5日連続で移動してたからとっても疲れたけど皆と一緒だから楽しかった。
それで5日連続のイベント、今日は東京。
久しぶりに家に帰れる。それだけでちょっと癒されるような気がした。
やっぱりね…皆といたから楽しかったけど、家が恋しいというか…。
佐紀ちゃんは「お母さんが作ったお味噌汁が飲みた〜い!」って言ってたし。




そんな事を思いながら帰る用意をしていると、後ろから突然声をかけられた。


「み、みや!」


いきなり肩をつかまれてびっくりしたけど、声で人物が分かってたから嫌ではなかった。


「え?あ、梨沙子?」
「あ、あのさ、明日って用事…ある?」
「明日?明日はラジオが…」


そう言った途端明らかに残念そうなしょぼくれた顔をする今日まで2歳年下の子。
一応メンバーだからラジオがあるのは分かってるはずなんだけど…。それを聞いたら「別に…」て、ぶっきらぼうに返された。


「…明日、誕生日でしょ?」


何となく分かってたから声を出したら驚いたようにこっちを見られた。
なんかその顔が面白くってついつい笑っちゃったら、また不機嫌顔をされたから謝ったら、小声で「なんでみやはそういう風にからかうかな…」とかぶつくさ言ってたけど聞こえなかった事にしておいた。


梨沙子明日誕生日でしょ?梨沙子は暇?」


そう言うと「予定はないけど…え?みや会えるの?」って言って驚いてた。


「もしかして梨沙子誕生日なのに暇人なの?」
「む…暇じゃないもん。」


なんか苛めると反応が楽しくてついついからかっちゃうけど、これ以上すると本当に怒りそうだから今度はきちんと謝った。けど、いまだに不満そうなんだけどね。


「ラジオ…終わったら会えるかも…。でもそうなると遅くなるかもよ?」
「それでもいい!来てくれる!?みやちゃんと来てくれる!?」
「う、うん。梨沙子んちがよければ行くけど…」
「大丈夫!待ってるから絶対来て!」


すっごい勢いで言われたからつい頷いちゃったけど、凄い笑顔で抱きついてきたからいいのかなぁ…なんて思ったり…。
ちょっと恥ずかしくなって「梨沙子はしゃぎすぎ〜」なんてからかっちゃったら、いいじゃ〜んって笑ってたけど。




この日はいままでの疲れがどっときたからすぐに寝ちゃった。


遅くまで起きて梨沙子にメールでも送ろうかと思ったけど、梨沙子も多分寝てるだろうし明日も仕事だから睡魔に流される事にした。
明日…朝一でメールすれば大丈夫だよね?


朝になって昨日よりは幾分かは軽くなった体。だけどそれに反して寝起きで重い頭。
それをなんとか起こして今日誕生日のあの子にメールをした。
朝一すぎてメールはすぐに返ってはこなかったけど…なんか、ちょっとその時間が寂しかったり…。
別に寂しがる事ないんだけど…今日あの子仕事ないし、あたしだけ早起きしたのがちょっとムカついたり。


ホントはそんなに早く起きなくてもよかったんだけどね。


やっぱり、その、誕生日だし。少しでも早く祝いたかったから。


1時間後に返ってきたメールはテンション高めな内容だった。
それが微笑ましくて、今までの不満とか吹き飛んじゃって、元気がもらえて今日も頑張れるような気がした。




ラジオは順調に終わって、でも始まりが遅かったから終わったのはもう夕日が傾きかけてちゃって慌ててメールした。
その様子を見てた千奈美には笑いながらからかわれたけど。
返ってきたメールでは文章を見る限りちょっと拗ねてたから急いで用意をしていたら桃に声をかけられた。


「みや〜どしたの?慌てて。」
「あ〜ちょっと梨沙子と会う約束してて…」


なんとなく恥ずかしくて最後の方が声が小さくなったけど、それについて桃は特に反応せず「早く行ってあげなよ」って返された。
「あ、そうそう…」そう言って桃はカバンの中をガサゴソ探して、小さな箱を渡してくれた。


「え?何?」
「あ〜それりーちゃんの誕生日プレゼント。」
「それは分かるけど…」


第一、桃が何もないのにあたしにプレゼント渡す人じゃないし。
そう言ったら「ひど〜い」って、ぶりっ子ぽく返されたけど。そこはあえてスルーしておこう


梨沙子に渡すなら一緒に行く?多分、人数多くても大丈夫だとは思うけど…」
「ん〜それはやめとく。」


そう言って小さな箱を押し付けてきた。
祝う人は多いほうがいいのにとか疑問に思ってたら「行ったら多分怒られるから。二人の時間邪魔したくないし〜」って…。
別にそんなんじゃないのになぁ。なんで皆そういう考えしてるんだろ…。


そうこうしている内にも時間が経っていたので、あたしは慌てて梨沙子の家に行く事にした。






―ピンポーン




「はぁ〜い!」


事前に家に着く大体の時間は教えておいたから室内からは元気な声。


「いらっしゃい!」


玄関が開いたと思ったとたんに前からの衝撃に耐え切れず倒れそうになる体。
なんとかふんばって、倒れそうになった原因の子を見るとすっごい嬉しそうに笑ってる。


「ちょっと梨沙子。いきなり飛びつかないでよ。」
「だって、ずっと待ってたんだもん。」


少し睨んでみてもニコニコ顔の梨沙子は悪びれもしない。
早く早く〜と楽しそうにあたしを家の中に引っ張り入れる梨沙子を見ながら、いつもだったら怒るけど誕生日だからいいかなと思って何も言わずに黙ってついてった。
リビングに着くと梨沙子のお母さんが微笑みながら挨拶してくれたので慌てて挨拶をした。


「ゴメンね〜雅ちゃん梨沙子のために来てくれて。」
「いえ、別に大丈夫です。」
「そう?だってもう時間遅いし今日もお仕事だったんでしょう?」
「いやぁ…」
「でも、来てくれてありがとね。梨沙子雅ちゃんが来るのすっごく楽しみに待ってただから。」
「ママ!ちょっと喋りすぎ!ほら、みやも行こ!」


別にここに来る事は苦痛でもなんでもなかったし、ちょっと苦笑いしながら梨沙子のお母さんと話をしていたら暇になったのかなんなのかよく分かんないけど梨沙子がちょっと不貞腐れながらお母さんに文句を言い、あたしを自分の部屋に連れて行った。


梨沙子、あたしの事待ってたの?」
「だって…暇だったんだもん。」


ちょっと頬を赤く染めながら答えた梨沙子が可愛くてついつい頭を撫でたらちょっと嫌そうな顔をされた。


「みや、子供扱いやめてよ。」
「ゴメンゴメン。」


なんとなく梨沙子の反応が可愛くてまたからかいたくなったけど、それをするのはやめといた。


「あ、言い忘れてたけど梨沙子誕生日おめでと!」
「ありがと!でもみや言うの遅ーい。」
「だって梨沙子が自分のペースで引っ張るからでしょ?」
「う…そうだけど…」
「あ!そうそう忘れてた!なんか桃からプレゼント渡してくれって言われてたんだぁ。」


そう言って桃から渡された小さな箱を梨沙子に渡した。
梨沙子はなんで桃から渡されたのか分からないという表情をしていたけど、すぐに中身をあけた。
小さな箱の中には可愛らしいブレスレットが入ってて、嬉しそうに身に着けてた。


「ありがと〜」
「それあたしからじゃなくて桃からだから。後でちゃんとお礼しときなよ。」
「うん、分かった〜」


なんて、ニヘヘと笑ってる梨沙子がちょっと気に食わなかったり。


「みやは?」
「ん?」
「みやからは何もないの?」
「ない」


すぐに返事を返すと、凄くショックを受けた顔になって。その変わりようが面白くてついつい笑ってしまった。


「うそうそ。ちゃんと持ってきたよ。」
「…みや、ひどい…。」
「早くよこせ〜」とか、騒いでる梨沙子はほっといて自分のカバンからプレゼントを取り出して渡した。


あげた瞬間に笑顔になるって現金だよね。それに普通自分からプレゼントの催促とかする?ありえない…。
とか、思ってたら早速中身を確認した梨沙子が声をあげた。


「みやー!これ、みやとお揃い?」


あたしがプレゼントした物を目の高さまで上げて尋ねてきた。


「うん。ほら、この前欲しがってたから。」


そう言って自分の右手を目線の高さに上げた。


「うわぁ〜みや、ありがと!」


キャッキャと騒ぎながら自分の指にはめてあたしの指にあるお揃いの物にコツンとあてて笑ってる。
ちょっと恥ずかしかったけど…梨沙子が喜んでくれたからこっちまで嬉しくなっちゃった。






今日は1年に一度の誕生日。
年齢が縮まっちゃうのはちょっと悔しいけど…


HAPPY BIRTHDAY! Risako!





〜おまけ〜

「あ、そうだ。もう遅いしみや夕飯食べていってよ。」
「いいの?」
「別に大丈夫!ママもそのつもりだろうから。ケーキも食べるよね?」
「うん。」
「そういえば、ラジオでホントに桃ちにケーキあげたの?」
「聴いてたんだ?なんかすっごい欲しそうな目で見ててさ〜。そんなに食べてなかったら桃が勝手に食べちゃうし。」
「みや…もしかして今日うちで食べるから桃ちにあげたの?」
「え?」
「あ、いや、なんでもない!早く食べにいこ!」


またもや梨沙子に引っ張られながらも雅は心の中で呟いていた。








(…それもあるんだけどね。あそこで食べてたらお腹いっぱいになっちゃってたし)




実際に口にすると恥ずかしいから言えなかったけど。








繋がれた手には二人の指輪が光ってましたとさ。