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・雅視点





あの日、梨沙子が雅の家に泊まった日から雅はどうしても梨沙子の事が気になってしまう。
ただ、他のメンバーにバレるのは非常にまずい。
だから何もなかった風に装うしか出来ない。


悩みの根源の梨沙子は、その出来事すら分かってないので普通だが。


だけど普通に接せられると逆に困ってしまう。
意識しないようにしているのに無意識にじゃれられると嫌でもあの日のことを思い出してしまうのだ。








そんなある日仕事のためにメンバー皆が集まる事になった。




あの後今まで何度か一緒に仕事をした。
なんとかごまかしてはいるが、勘のいいメンバーなら既に気付いてるはずだ。
いや、むしろ気付かないはずがない。


楽屋に他に人はいるも一人で雑誌を読みながらもどこか上の空。
梨沙子の事を考えてばかりいるから注意も散漫になるわけで…。


「みーや、何してんの?」


突然後ろから覗いてきた桃子にも気が付かなかった。
だから思わず驚きすぎて雑誌を落としそうになったりもする。


「ちょっと、みーやホントにどうしたの?」


雅が端っこの席に座っていたので斜め前の席に座りながら桃子が問う。
さすがにいつもの雅らしくないと思ったのだろう。
いつもだったら突然話しかけても普通に対応する。雑誌を落としそうになるまで取り乱さない。
何かと勘の鋭い桃子。
雅も桃子にはバレているだろうと不安に思っていた。


「みーやさぁ、なんか最近おかしくない?」
「はぁ?別に普通だって。」


間髪いれずに返すも納得している様子ではない。
むしろ逆に怪しく思ったのか雅の顔を覗き込んでくる。


「・・・・・・・・・」
「な、何・・・?」
「あのさ〜、もしかしてりーちゃんと何かあった?」
「は、ハァ!?」


あまりに的を得た質問をされたのでつい大声をあげってしまった。
その声に他のメンバーが気づき一瞬メンバー皆の視線が雅と桃子の二人に集まる。
が、すぐに雅も平静を装って皆に笑顔を振り撒いたのでメンバーも各自の事をし始めた。


「みーや、動揺しすぎ〜」


今までの行動を見て桃子がケラケラと笑う。


やはり雅の思ったとおり桃子の勘はやはり鋭い。
ただでさえ動揺していた雅。『梨沙子』に関する単語が出るだけで過敏に反応してしまう。


「んで、何があったの?」


とても楽しそうに聞いてくる桃子。ニコニコしながら雅の様子を窺っている。
逆に複雑な表情の雅。思い出すだけでも恥ずかしいのに、それを人に言えるわけなんてない。


そんな心を知ってか知らずか桃子は勝手に話を進めていく。


「ふ〜ん、りーちゃんとなんかあったんだ〜。」
「・・・・・・・・・」
「ここまで、みーやが動揺するんでしょぉ?って事はもしかしてみーやりーちゃんにキ・・・」
「も、ももっ!!」


桃子の言葉を遮って慌てて口を押さえる。
さすがに2回も雅の慌てている姿を見ているメンバーもおかしく思うわけで、案の定キャプテンの佐紀が雅の様子を心配して二人の元に来た。


「みや、さっきからどうしたの?大丈夫?」
「あ、なんでもないよ。なんかももが変な事言うからさ〜」
「え?あたし変な事言った!?」
「・・・・・・・・・」
「いっ・・・」
「もも、どうしたの?」
「なんでもないよね!?」
「う、うん。」
「・・・?」


少し離れた位置にいる佐紀には分からなかったが、桃子がこれ以上何を言うか分からないと思った雅はとりあえず桃子の脚を蹴った。
それがちょうど弁慶に当たったらしく桃子はかなり痛がっている。
が、そこは自他共に認めるアイドル。蹴られた次の瞬間には既に笑顔を作っている。
さすがに思いっきり蹴りすぎたかなと思った雅だが、桃子のそういう部分には感心してしまった。


「あ、ホントになんでもないから!」
「でも・・・」
「ホントに大丈夫だから。ね、もも?」
「うん、大丈夫☆」
「そう・・・」


納得したような納得していないような表情で元いた位置に戻る佐紀。
それを見てから二人は座りなおし桃子の文句が始まった。
だがさっきの事を踏まえて今度は小声で。


「ちょっと、みーや!急に蹴らないでよ!」
「もも、勝手に余計なこと言うじゃん。」
「それはぁ、まぁそうだけど。」
「でしょ?」
「だけど、そこまで必死に止めるって事は・・・」
「・・・・・・・・・」


そこで、またもや黙ってしまう雅。
もう既にバレているのは自分でも分かっている。だけどそれで悩んでたなんてやっぱり言えない。


「もうみーや強情だな〜。皆もう知ってるよ?」
「・・・え?」
「だってみーや、りーちゃんにだけ妙に優しいじゃん。」
「そ、そうかな・・・」
「あたしにはこんなに冷たいのに。」
「それはももがキショいんだって・・・。」
「・・・話戻すけど、りーちゃんもみーやの事好きだよ。」
「はぁ?そんなわけない・・・そんなわけないよ。」
「え〜絶対そうだって!」


自信満々に言う桃子。
それとは対称的に不安顔の雅。
どうも梨沙子の事となるとネガティブに考えてしまうらしい。
そんな雅がいつもとは違くてちょっと可愛いなとか思ってしまう桃子だが、ここで恐らく今一番雅が会いたくない人物が来た。
家業
「みや、ももちおはよっ!何話してるの?」
「ッワ!」
「りーちゃんおはよ〜」


急に背後から抱き付かれたので驚いて声を上げてしまう雅だったが話の中心人物はのほほんと抱きついている。


「ちょっと梨沙子、急にくっつかないでよ。」
「え〜いいじゃんいいじゃん。」


そう言って八重歯を見せながら笑う梨沙子を、なぜだか今は憎らしく思えてしまう。
斜め前にいる桃子はなぜかニヤニヤ笑っているし・・・。


「んで、なんの話してたの?」
「別になんでもないよ。」
「りーちゃん聞きたい?」
「聞きたい聞きたい!」
「ちょっ、ももヤメテよ!」


止めようとしても後ろに梨沙子がくっついてるため桃子の口を塞ぐ事ができない。
それをいい事に桃子はペラペラと喋っていく。


「あのね〜みーやがぁ、好きな人が出来たんだって。」
「え・・・」
「ちょっともも、いい加減にしてよ!」
「ふーん・・・みや、好きな人いたんだ・・・。」
梨沙子も信じないでよ。」


話してほしく無いことを話す桃子。
それを信じている梨沙子


「りーちゃん、みーやの好きな人知りたい?」
「・・・別に。」


そう言ってえらくあっけなく雅の体から離れる梨沙子
そしてそのままトランプをしている友理奈たちの方に行ってしまった。
その態度に拍子抜けする雅。


「りーちゃん素っ気ないねぇ。」
「・・・・・・・・・」
「みーやの好きな人教えるとか言ったらすぐに向こう行っちゃったし。」
「・・・・・・・・・」
「いっつもだったら、気にするのにね〜」
「・・・興味ないんじゃないの?」
「え〜そんなわけないってぇ。」
「もう、この話やめよ。」


桃子はいまだに話そうとしているが、それを遮るように自分のMDを取り出し音楽を聴き始めた。


どうしても梨沙子の反応が気になってしまう。
それは・・・やっぱり好きだから。
好きだからこそ相手の気持ちも考えてしまう。


素っ気なく離れたことなんて今までそんなに無かった事だから多少なりともショックを受けた雅はその日の仕事はいつもより口数が少なくなってしまった。





梨沙子視点





仕事があるから楽屋に入ったらこっちに背を向けている子とその子に楽しそうに話しかけてる子。
後ろ姿だけでも誰だか見て分かる。


だって、自分が一番好きな人だから。


だから普通にいつも通りに挨拶をしたのに、いつもとは違う反応。
そして二人で話してた内容は「好きな人」の話。


聞きたかった・・・ホントはすごく気になった。
だけど自分の好きな人が違う人を好きだったらなんて考えると聞く気にもなれなくてすぐに違う所に行ってしまった。


それからのあたしは多分今までで一番不機嫌だったかもしれない。
他の人にフォローしてもらったりしてなんとか仕事をこなしたけど、やっぱり気になる・・・。
一人楽屋に残ってぼーっと考えてみたりするけど、考えれば考えるほど・・・。


メンバーの中で仲良い子沢山いるし。
佐紀ちゃんとかももちとか友理奈とか・・・。
もしかしたら中学にあがって好きな人が出来たとか・・・。


どうしても悪い方に捉えてしまう。




そんな気持ちを振り払いたくて家に帰ろうと思ったら意外な人物がドアの前にいた。


「りーちゃん遅〜い。」


待っててなんて言ってなかったのになぜか桃子が前にやってくる。


「も、ももちなんでいるの!?」
「え〜なんかりーちゃんが落ち込んでるからなぐさめてあげようかなって。」
「別に大丈夫だし・・・」
「みーやの事でしょ?」
「っ・・・・・・・・・」


言い当てられて思わず下に落としていた視線を桃子に向けてしまう。
今日だけは桃子の笑顔が嫌な感じがする。


「りーちゃん、みーやの好きな人が気になるんでしょ?」
「別に・・・」
「なんで、そう言うかな〜。みーやの事好きなんでしょ?」
「な、なんでそういう事になるの!?」
「だって好きでしょ?」
「うっ・・・・・・・・・」
「バレバレなのにねぇ。」








ー・・・好きだもん。一番好きだもん。ー








そう・・・誰よりも一番雅のことが好きだ。
誰よりも、他の誰よりも自分が一番雅の事が好きだ。
桃子に聞こえないような小さな声で言ったが、口の動きで理解はしているらしく話を続ける。
しかし、それは耳を疑うような一言だった。


「早くしないとみーや誰かに取られるよ。」
「え!?」
「みーやってさぁ、やっぱモテるんだよね〜」
「・・・・・・・・・」
「だから早く告白した方がいいんじゃない?」
「でも・・・」
「誰かに取られてもいいの?」
「そ、それはヤダ!」
「だったら、早く言った方がいいよ。」
「うぅ・・・」


そう言われても梨沙子でも悩む。
普段皆に自由奔放だとか思われてる梨沙子でもそれなりに勇気がいるのだ。


「あぁもうグズグズするな!さっさと言ってこーい!!」


いつもとは違う梨沙子の様子に業を煮やしたのか桃子は梨沙子に喝を入れ強引に楽屋から外に追い出される。
もちろん荷物と一緒に。


しばらく廊下を歩きながら考える・・・。
桃子にあそこまで言われたのにそのまま帰るわけには行かない。




思いたって梨沙子は雅に会いに行くべく走り出した。







〜あとがき〜

そんなわけで第三弾。
グダグダしてるけど、まぁそういうのは気にせず・・・。
てか、今回桃子がでしゃばりすぎだwとりあえず出してみたら喋る喋るw
ホントはそんなに喋る予定じゃなかったんですが、桃子は勝手に動くなぁ…。
てか、りしゃこが珍しく弱気。そしてみやも弱気。
勘違いですれ違いとかってベタな展開すぎのような…まぁいいや。


桃子のおかげでりしゃこが動き出したので次でラストですね。
先に言っておきますがエロはないですよw


てか、今回繋ぎ的な文章すぎたから話が進んでないなぁ。